外題
歌舞伎の演目の題名のことを外題(げだい)という。「芸題」(げいだい)が詰まって「げだい」になったとする説もあるが、古代から中世にかけては絵巻物の外側に書かれた短い本題を「外題」、内側に書かれた詳題を「内題」といっており、これが起源だとする説もある。
外題はもともと上方歌舞伎の表現で、江戸歌舞伎では名題(なだい)といっていた。こちらにも「内題」(ないだい)が詰まって「なだい」になったとする説があり、上方の「外題」と江戸の「名題」で対になることが、絵巻物起源説の根拠となっている。
外題には縁起を担いで伝統的に「割れない」奇数の字数が好まれる。このため『義経』や『四谷怪談』のようにどうやっても割れてしまう字数には、あえて「千本櫻」や「東海道」などの奇数の字を付け足して『東海道四谷怪談』や『義経千本櫻』などいった長い外題とした。しかも作者や興行主は当て字や当て読みを駆使して粋を競ったので、外題には凝った漢字五文字か七文字のものに長大な読みを無理に付けたものが多く、今日のわれわれから見ると字面だけでは何と読めば良いのか分らないようなものある。このため五文字以上の外題がついた演目には、より親しみやすい通称がついていることも多い。
- 『都鳥廓白波』(みやこどり ながれの しらなみ) →『忍の惣太』(しのぶの そうた)
- 『大塔宮曦鎧』(おおとうのみや あさひの よろい) →『身替り音頭』(みがわり おんど)
- 『慙紅葉汗顔見勢』(はじ もみじ あせの かおみせ) →『伊達の十役』(だての じゅうやく)
- 『刈萱桑門筑紫𨏍』(かるかや どうしん つくしの いえづと) →『刈萱同心』(かるかや どうしん)
- 『青砥稿花紅彩画』(あおとぞうし はなの にしきえ) →『白浪五人男』(しらなみ ごにんおとこ)
- 『与話情浮名横櫛』(よはなさけ うきなの よこぐし) →『切られ与三』(きられ よさ)
- 『蘆屋道満大内鑑』(あしやどうまん おおうち かがみ) →『葛の葉』(くずのは)
また歌舞伎は通し狂言として上演されることが稀で、通常は各演目の中から人気のある場面(段・場・幕など)のみが単独で上演されるが、その場合、外題でも通称でもその場面本来の名称でもない、全く別の通称が用いられることがある。
- 『心中天網島』「天満紙屋内」の段 →『時雨の炬燵』(しぐれの こたつ)
- 『国性爺合戦』二段目「獅子ヶ城楼門の場」→『楼門』(ろうもん)
- 『楼門五三桐』二段目返し「南禅寺山門の場」→『山門』(さんもん)
- 『平家女護島』二段目「鳥羽の作り道の場」 + 二段目切り「鬼界が島の場」→『俊寛』(しゅんかん)
- 『義経千本桜』四段目「道行初音旅の場」→『吉野山』(よしのやま)
- 『義経千本桜』四段目切り「河連法眼館の場」→『四ノ切』(しのきり)
なお返しとは明るいままで幕を引かずに場面が換わるところ、切りとは幕切れ前に舞台が盛り上がるところをいう。『義経千本桜』の四段目の切りは派手な演出で有名な人気の場面で、これが上演されることが特に多かったことから、ただ「四ノ切」と言えばこの場面を指すようになった。